みんなの寄付で大修復を目指す巨大掛け軸「釈迦涅槃図」を見てきたお話

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1633年創建、函館で最も古い歴史を持つ曹洞宗の寺院「高龍寺」。

近年は、猫やお坊さんの写真がSNSで人気になるなど、楽しい取り組みもいろいろされています。

そんな高龍寺には「寺宝」として美術品が数多く所蔵されていますが、今回そのなかでも特に美術品としての価値があり、北海道指定文化財にもなっている巨大掛け軸を展示するよ、という話を聞き、さっそく見学してきました。

看板が出ているので、中へ。特に受付などはないので、靴を脱いでそのまま進みます。

本坊2階が展示会場。突き当りに、天井に届かんばかりの巨大な掛け軸2幅がそびえています。

お釈迦様が今まさに亡くなろうとする時、弟子たちはもちろんのことさまざまな動物たちまでもが集まり、別れを惜しんで悲しむ様子を描いた「釈迦涅槃図(しゃかねはんず)」。

描写が細かく、とても見ごたえがあります。

その一方で……

シミやカビが目立つ部分もあり、描かれてから200年余りの時の流れも感じます。

そもそもこの掛け軸は……?

高さ3メートルもあるというこの掛け軸。作者は、松前藩の家老であり絵師としても名をはせた異才、蠣崎波響(かきざき はきょう)。

細かいことは省略しますが、お寺にとって「ほとけさま」であると同時に、美術品としても非常に価値があるとされています。

高龍寺では、お釈迦様が亡くなった日に合わせて行う法要では必ずこの掛け軸を掲げ、読経や焼香を行ってきたとのことです。

次の100年に残すため、みんなの力で大修復

この「釈迦涅槃図」、明治時代に一度修復された後、120年にわたって修復できなかったそう。

おもな理由は「大きすぎる」こと。それによって修復費用が莫大であること。

そして、毎年法要で掲げてきたため、傷みが激しいこと。

でも、こんな素晴らしいお宝が北海道に、函館にあるのだから、なんとか今の世代で修復して、次の100年につなげたい。

そんなわけで今回、高龍寺はクラウドファンディングで広く修復費用を集めることにしました。

詳しい内容は下記リンク先でご覧ください。

道指定文化財・蠣崎波響『釈迦涅槃図』を120年ぶりに修復し未来へ!」(READYFOR)

高龍寺宝物展の開催期間は

2023年10月10日(火)まで。時間は9:00~17:00。7日(土)と8日(日)はお寺のお祭りが開催されています。7日16:30から、釈迦涅槃図の解説を行う特別講演会「謎解き涅槃図」があります。

最後に、会場に貼ってあった趣旨説明を貼っておきます。

蠣崎波響筆『釈迦涅槃図』修復を目指します

実施背景

当山では寺宝として蠣崎波響筆 『釈迦涅槃図』 を収蔵しております。 この絵は松前藩家老でもあった絵師、蠣崎波響の作品の中でも最大のものの一つで、昭和43年には北海道指定有形文化財にも指定され、現在も函館市のホームページで紹介していただいております。

もともとこの絵は、高龍寺第十一世である華重禅海住職の求めに応じ、 蠣崎波響が書いて奉納した物です。当山では毎年4月1日から15日まで限定公開し、その間各報道機関をはじめとして市民の皆様に広くご覧いただいております。

しかしながら、 約120年もの間修理修復が行われておらず、各所に傷みが生じ、保存へ向けた修復の必要性は市の文化財課、道や文化庁からも伝えられておりました。緊急性は年々増しており、当山の収蔵する他の波響作品は独力にて概ね修復保存を終えたものの、『釈迦涅槃図』に関しては修復費用の高額さなどの点も相まって、なかなか修復に踏み切れずにおりました。

このたび、当山のみならずこの地域の宝であるこの絵を次代へと継承するために、新しい手段を活用して広く皆様の共感と御支援を仰いでいくことを目的とし、檀信徒の皆様から 広くご協力を募ると共に READYFOR株式会社様のクラウドファンディングを活用していく結論となりました。

実施目的

蠣崎波響最大の作品である『釈迦涅槃図』をおよそ120年ぶりに修復し、次代の檀信徒・市民も現在同様参拝・鑑賞できる未来を作ることを目的とします。

檀信徒、地域の人たちと共に動き始める

もともとこの『釈迦涅槃図』を当山が収蔵していることは広く知られていました。これまでも各報道機関様の取材をはじめ、公立はこだて未来大学 川嶋稔夫教授によるミュージアムIT事業への協力、道立函館美術館様とのコラボによる「波響四館ツアー」への協力など、お寺を越えた函館の宝として様々な場所で市民の皆様にご覧いただく機会がありました。ご鑑賞いただいた方々に保全の必要性をお話しするたび「修復する時は少しでも協力させて下さい」「皆に広く協力を仰いで修復をしましょうよ」との声を多くいただきました。この声はお檀家さんのみならず、 地域の方々、また、観光客の方々からも届いています。

函館のお寺として

我々も「この絵を次代に残さなければ」との思いのみで動き出したプロジェクト、パソコンやデジタルが得意なわけでは決してありません。クラウドファンディングの概要すら満足に理解できていない状況のなかで、地域の方々やREADYFOR株式会社様の協力のもと理解を深めていきました。 幸いに、函館市長大泉潤様から応援メッセージをいただけたのをはじめ、多くの方々のご理解とご協力のもとにここまで進めてまいりました。

未来へ

こういった、時代の流れと共に新しいことに挑戦する姿を公開していくことは、若い世代やこれまでお寺と縁遠かった方々への認知を図れる好機であると考えております。これまで高龍寺は、その歴史と伝統から、敷居が高いと言われ続けてきました。私が住職になってからはその敷居の高さを無くするために日々努力してきたつもりではありますが、そこからー歩みを進め、檀信徒の皆様には「私の菩提寺にはこんな宝がある」と、そして市民の皆様にも「私の街にこんな絵がある」と誇りを持ってもらうことを目指してチャレンジを行ってまいります。

その姿を、檀信徒はもとより広く一般の皆様にも今回の挑戦をご認識いただき、お力をお借りできればと考えております。

高龍寺公式サイト

高龍寺Instagram

高龍寺X

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佐々木康弘

佐々木康弘

ライター、時々カメラマン。物を書いたり写真を撮ったり、それらを編集したりすることを仕事にしています。函館市内と近郊で、年間100件ほどのイベントに足を運んでいます。編集企画室インサイド代表。