【5月26日追記】5月25日の緊急事態宣言解除を受けて、北海道での対応がどう変わったのか疑問を持つ人が増えており、この記事のアクセスが増えています。新たな記事を追加しましたので、下記リンクからご覧ください。
【注意】道の休業要請などが6月1日ですべて解除されたことにより、この記事は古い情報となりました。 参考にしないようにお願いします。 ...
【注意】この記事はすでに古い情報となっていますので、参考にしないようにお願いします。
5月14日に国の緊急事態宣言が39県で解除された際に北海道は解除されなかった一方、鈴木知事が13日の記者会見で石狩管内以外の休業要請を一部解除すると発表したことにより、「北海道は緊急事態宣言が継続された」という情報と、「石狩地方以外は緩和された」という一見すると相反する情報が両立する状態となっています。
ここをきちんと整理して伝えてくれるメディアが意外と少ないため、解説記事を作ってみました。
・緊急事態宣言と緊急事態措置の違い
・休業要請は2種類ある
・追加で10万円もらえる事業者とは
おおむね、この3点をご説明します。
緊急事態宣言とは
感染症が全国的に急速にまん延し、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼす場合に、内閣総理大臣が「期間・区域・事案の概要」を特定して宣言します。
この宣言自体が直ちに国民の生活や権利を制限するわけではありません。
しかしながら、緊急事態宣言が出されると都道府県知事は普段よりも強い権限を行使することができるようになります。
具体的には、期間や区域を定めて不要不急の外出自粛や感染リスクの高い施設の休業などを要請することができるようになります。ですから、緊急事態宣言は国民をビビらせて自粛させようとするのが目的というよりも、地域ごとの実情に合った対策が取れるように知事に強力な権限を一時的に与えるための法的な裏付け、もしくは手続きととらえることができます。
各都道府県の知事が行う外出自粛や休業の要請などを「緊急事態措置」と呼びます。
【まとめ】 緊急事態宣言……国が知事に一時的に強い権限を付与するための手続き 緊急事態措置……緊急事態宣言に基づいて知事が行う外出自粛や休業などの要請 |
参考……内閣官房「新型インフルエンザ等対策特別措置法について」
でも知事も緊急事態宣言を出していたのでは?
この項は細かいことが気になる方だけお読みください。
国が出すのが「緊急事態宣言」で、それに基づいて知事が行うのが「緊急事態措置」ですよと書いたばかりですが、中には「でも鈴木知事も緊急事態宣言してなかったけ?」と思う方もいるかも(いたらすごい注意力です)。
確かにその通り。知事は2月28日に緊急事態宣言を出しています。
これはいわゆる「1回目の自粛」。第1波が来た時に北海道が全国に先駆けて行った自粛の呼びかけです。実はこの時はまだ、国の緊急事態宣言が出ていなかったため、知事には自粛を呼び掛ける法的な根拠はありませんでした。会見で自ら認めています。 ※2月28日臨時記者会見
つまり、あくまでも協力依頼としての呼び掛けでしたが、道として独自に「緊急事態宣言」という用語を使ったということになります。
新型コロナウイルスを「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の適用対象とする改正が行われた3月以降は、道が独自に「緊急事態宣言」を出したことはありません(詳しくは次の項)。代わりに「緊急メッセージ」という用語を用いています。
緊急事態宣言の法的根拠について
この項は法律に興味がある方だけお読みください。
緊急事態宣言は、2012年に施行された「新型インフルエンザ等対策特別措置法」32条に基づいて出されます。
緊急事態宣言が出された時に知事が休業を要請することができる施設については、特措法45条2と特措法施行令11条に定められています。
北海道が出している休業要請もこれに準じています。 ※北海道「基本的に休止を要請する施設」を参照
法律の名称でわかる通り、この特措法はもともと新型インフルエンザを想定したものでしたが、今年3月に新型コロナウイルス感染症を特措法の適用対象とする改正が行われました。ただし、法律の内容そのものは変わっていません。
緊急事態宣言は今どうなっている?
この記事を書いている5月18日現在の状況です。
国が4月7日に7都府県に出した緊急事態宣言は4月16日から全国に拡大されましたが、5月14日で39県が解除されました。北海道を含む8都道府県はそのまま継続され、21日に政府が継続か解除化を判断することになっています。よって、
北海道は特定警戒都道府県として緊急事態宣言継続中です。
これによって知事が外出自粛や休業要請などを行う「緊急事態措置」も全道で継続中です。
北海道「知事からのお知らせ」知事記者会見5月15日「現在の状況など」より
では何が緩和されたの?
緩和されたのは、知事の権限で外出自粛や休業要請などを行う「緊急事態措置」の一部。
新規感染者数の9割以上が石狩管内に集中している状況を踏まえ、全道一律の「措置」を改め、石狩管内とそれ以外の地域の「措置」に5月16日から差をつけました。
具体的には、下の図の通り。
北海道「知事からのお知らせ」知事記者会見5月15日「現在の状況など」より
表の一番上の行「ナイトクラブ、カラオケボックス、ネットカフェ、映画館、展示場等(法令に基づく施設※)」は、5月16日以降も全道で休業要請が出たままです(5月31日まで)。パチンコ店、バー、スナックなどもこれに含まれます。
※「法令に基づく施設」とは、特措法45条2と特措法施行令11条に定められた施設です
一方、道が独自に協力を求めていた部分については石狩管内以外で解除されました。これが表の2行目「床面積計が1000㎡以下の各種商業施設、大学、学習塾、博物館、美術館等(法令によらない協力依頼を行う施設)」と、3行目「酒類を提供する上記に含まれない飲食店」です。
もう少し詳しく説明します。
休業要請は2種類あった
繰り返しになりますが、今回全道で継続された休業要請は、特措法45条2と特措法施行令11条に定められた施設への休業要請です。つまり、法律に基づいた休業要請です。
この法律は、一部の施設について床面積1000㎡以上のみ対象とすると定めています。
ところが、実際の運用として「床面積1000㎡以下の施設でも感染リスク低減のために休業したほうが良いのでは」という考え方が各都道府県知事の間で共有されました。
このため北海道を含む多くの県は、法令に基づかない「協力依頼」として、床面積1000㎡以下の商業施設などにも休業への協力を呼び掛けました。
ですから、道が求めていた休業要請には
「法律に基づく要請」
「法律に基づかない協力依頼」
の2種類があったことになります。
今回石狩管内以外で解除されたのは、後者の「法律に基づかない協力依頼」の部分になります。
詳しくは下記の一覧でご確認ください。青で示されているのが石狩管内以外で休業要請が解除された施設になります。 ※タップ(クリック)で拡大します
北海道「休業要請等について」休業要請等の対象施設一覧「基本的に休止を要請する施設」より
酒類提供自粛も石狩以外は解除
道が独自に協力を呼び掛けていた、酒類を提供する飲食店への19時以降の酒類提供自粛についても、5月16日から石狩管内以外は解除されました。
※バーやスナックなどは引き続き全道で休業要請の対象のため、これに当てはまりません
これを受けて、函館市内でも「19時以降酒を提供できないのなら」と自主的に完全休業やテイクアウトのみの営業としていた居酒屋や飲食店などが5月16日以降営業を再開しているのはご承知の通りです。
【まとめ】 ・石狩管内以外で解除されたのは、1000㎡以下の施設に出していた休業への「協力の依頼」と、19時以降の酒類提供自粛 |
新たな5万円・10万円の支給とは
知事が5月13日に発表した「追加の5万円・10万円支給」が新たな疑問を生んでいるので、概要をざっと解説します。ここでは、石狩管内以外のケースについてのみ説明します。
・正式な名称……経営持続化臨時特別支援金
・支給の対象……支援金A(10万円)は、法律に基づく休業要請対象施設。支援金B(5万円)は、国の持続化給付金を申請し、受け取った事業者
【注意】申請方法の詳細や申し込み先などは未発表です
支援金A(10万円)について
この支援金を受け取れるのは、法律に基づく休業要請対象施設です。自主的に休んだ施設は対象外です。
どの施設が「法律に基づく休業要請対象施設」になるのかは、北海道「休業要請等について」の「休業要請等の対象施設一覧」 > 「■対象施設<5月16日から>」 >「基本的に休止を要請する施設」と進んでご確認ください。「石狩振興局管内以外の地域」の列で「対象」となっていれば休業要請施設です。
支援金を受け取るためには、5月19日(火)から5月31日(日)まで休業に協力する必要があります。
Q.5月15日までの休業で出た支援金(休業協力・感染リスク低減支援金)とは別?
A.別モノです
Q.前回の支援金とは別に申し込まなきゃいけないの?
A.そうです
Q.5月19日(火)から5月31日(日)までの休業に協力しなかったら、前回の支援金は取り消しになる?
A.なりません
Q.休業要請の対象になっている施設です。前回の支援金を申請していなくても、5月19日から31日まで休業すれば今回の10万円は申請できますか?
A.できます
支援金B(5万円)について
この支援金は、ひと月の売上が前年同月比で50%以上減少した事業者に最大で個人事業者100万円、法人200万円を国が支給する「持続化給付金」を申請して給付を受けた事業者が対象です。給付を受けていれば、道が5万円を上乗せで支給します。※一部特例もあります
国の持続化給付金の「給付通知書」の写しと、業種・業態が確認できるもの(宣伝チラシ、ホームページ、広告などのコピーまたは施設の外観・内景がわかる写真)があれば申請できます。
北海道「知事からのお知らせ」知事記者会見5月15日「経営持続化臨時特別支援金」より
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佐々木康弘
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