※写真は五島軒の若山豪社長と、アニメ監督の深瀬沙哉さん
五島軒本店をメイン会場に、声優・漫画家・ゲーム制作者・アニメプロデューサーなど、豪華ゲストが函館に集結するアニメ・ゲーム・漫画の祭典「おもちゃ函(はこ)2025」が、7月12日(土)と13日(日)に開催されます。
……と書くのは簡単なんですが、内容見るとすごいんですよ。このイベント。
ベテラン声優さん何人も出演するし、アニメの作り手側の方々も来場するし、プロの方々から特別授業を受けられる機会まであったり。しかも、基本すべて無料。すごすぎて、なんか逆にあやしい。
そこで、函館発の本格的なアニメイベント「おもちゃ函」の企画・運営を手掛ける函館出身のアニメ監督・深瀬沙哉さんに、「ぶっちゃけなぜ函館でこんなイベントをやることになったんですか」と直球で聞いてきました。
函館でアニメイベントを開催する理由とは
――よろしくお願いします。まず、今回のイベントの趣旨についてご説明いただけますか?

アニメイベントは全国に数多くありますが、コスプレメインのイベントが多く、アニメ作品そのものにフォーカスしたイベントは少ないと感じていました。
徳島市のアニメイベント「マチ★アソビ」を体験し、アニメの作り手が手掛ける本格的なイベントを函館でも実現したいと考えたのがきっかけです。南は徳島、北は函館でアニメイベントを盛り上げようではないかと。
私自身がアニメ会社を経営しているので、そのツテを最大限活用して、クリエイターや声優によるトークショーやライブなどを企画しています。
▲2日間とも、秋元千賀子さんと山口由里子さんによるトークショーを開催するなど、豪華ゲスト続々登場
――ズバリ、函館でアニメイベントを開催する目的は何ですか?

一言でいうと「種をまくこと」です。
函館は観光産業が盛んな半面、地域経済の多角化が課題です。アニメーションや声優、漫画、ゲームといった新しい産業をここから発信し、函館で少しずつ成長の芽を育てたい――そんな思いで「おもちゃ函」の開催を決めました。
――ゆくゆくは函館にアニメ制作会社を?

実は、函館に新築した自宅の2階3室をアニメ会社のスタジオ仕様に設計しました。場所は確保済みなので、あとは地元で制作できる人材が育ってくれることを願うばかりです。東京から社員に移住してもらうのは難しくても、イベントを通じて「函館で働くのもいいかも」と思ってもらえれば──と考えています。
函館のメリットとは
――地方都市にスタジオを置く利点は?

近年、ufotable(徳島・東京)をはじめ、地方にアニメスタジオや制作会社を置く動きが加速しています。
函館は暑すぎず、寒すぎず、金森赤レンガ倉庫、新選組ゆかりの地、五稜郭など、少し歩いただけでドラマがあります。これほどまでにドラマが凝縮されている函館は、クリエイターの創作意欲を大いに刺激してくれる町だと感じています。
――クリエイターにとって、暮らしている環境は大切ですか?

もちろんです。やはり人の子ですから。私も早く函館に拠点を移したいのですが、仕事の受注という面では、東京のほうがやりやすいのが現実です。
ですが、「おもちゃ函」出演の依頼には、皆さん快諾してくださいました。ゲストでお呼びしていないのに、東京から自発的に参加してくださる方々もいます。理由を聞くと「イベントにも興味があるし、函館のまちにもすごく興味があるから」と教えてくれました。
▲イベントへの出演が非常に少ないという小形尚弘さん(ガンダムシリーズ エグゼグティブプロデューサー)も2日間にわたってご出演
――なるほど。函館でやるなら行ってみようと思ってくれるのですね。

そうですね。函館というネームバリューは非常に大きいので、「函館のアニメイベント」が全国に知られるイベントになる可能性は非常に高いと考えています。少なくとも、地方の観光都市で実施されるアニメイベントとしては、日本最大規模にまで育つ可能性は十分あります。
おもちゃ函の具体的な内容は?
――あらためてお聞きしますが、イベントの具体的な内容を教えてください。

業界のプロフェッショナルによるトークイベントや、アイドル・声優のユニットによるライブを開催します。日曜(13日)には、ハコダテコスプレとコラボしてイベントを行います。津軽海峡フェリーとのコラボイベントも行います。物販では、アイドルのグッズやチェキ、アニメ作品のグッズなどを販売します。秋葉原で活躍されているアニソンDJによるイベントも行います。コスプレイヤーも来場します。夜には、ozigi brewing函館麦酒醸造所でイベントを行います。
詳細・最新情報は「おもちゃ函」公式Xで発信しているので確認してもらえたらと思います。
▲「おもちゃ函2025」参加作品の一部
▼12日(土)のスケジュール
【出演者紹介】#おもちゃ函 に2.5次元ヒロイン系アイドルユニット、「もふる×クロス」が参戦‼️
来年2月に武道館ライブを控えているもふる×クロスさんが函館で特別ライブを開催🎤✨
五島軒本店にて両日19時から!
皆でステージイベントのラストを盛り上げよう🔥@mofrucrossinfo pic.twitter.com/iAHouaY1JO— おもちゃ函【公式】@アニメ・ゲーム・マンガ・函館総合イベント (@omocha_hako) July 1, 2025
▲「おもちゃ函」公式Xで最新情報を随時発信中
イベント前日の特別授業がガチすぎる
――一般向けイベントは土日(12日~13日)ですが、11日(金)には特別授業という催しがあるそうですね。

11日はまず、市内の高校で在校生を対象に、アニメにかかわる仕事紹介と作画体験を行います。その後、五島軒で一般の方々を対象にした公開授業を行い、アニメのプロデューサー、脚本家、漫画家、声優などが講師として登壇します。アドビ公式インストラクターが指導するアニメ制作体験も行います。
○五島軒での特別授業
16:00~16:30 アニメプロデューサー論 諏訪道彦(『名探偵コナン』『シティーハンター』初代企画プロデューサー)
16:35~17:05 シナリオ 前川淳(脚本家 『ドラゴンボールZ』・『デジモン』等)
17:10~17:40 漫画 成田卓哉 (小学館マンガワン編集部)
17:45~18:15 Adobeツールアニメ制作体験 大倉照結(アドビ公式インストラクター)
18:20~18:50 声優 秋元千賀子(声優『サザエさん』花沢 『∀ガンダム』ジェシカ 『東のエデン』飯沼千草 等)
18:55~19:25 アニメ 深瀬沙哉 アニメ制作会社UWANPictures代表 嫌パン キティちゃん監督
19:30~20:10 ゲーム 松山洋(ゲーム会社 株式会社サイバーコネクトツー代表取締役『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』シリーズ、『.hack』シリーズなど)
○同時常時開催(15:00より)
漫画持ち込み 成田卓哉(小学館マンガワン編集部)
アドビお悩み相談室 大倉照結(アドビ公式インストラクター)
アニメ 作画体験 ササユリ動画研修所
――短時間とはいえ、プロに直接学べるのはすごいですね。

東京では絶対できないことなので、良い経験になると思います。
ゲームとは、アニメとは、声優とは……など、興味はあっても具体的にはよく分からないという方が多いと思うので、プロから直接聞いて、希望をふくらませたり、自分には向いていないかもと思ったり。そういう場になればと思います。
――東京では絶対できないというのは?

まずスケジュール的にこのメンバーがそろわないのと、お金の問題ですね(笑)。今回、函館という場所だからこそ、ゲストは「深瀬の顔を立てて」快く集まってくれます。「函館でやるなら行きたい」と言ってもらえるのが大きいですね。
深瀬監督ってどんな人ですか?
――深瀬監督をご存じない方のために、改めて自己紹介していただけますか?

函館生まれで、青柳小学校、潮見中学校に通い、その後札幌の札幌高専高校に行きました。その後、東京工芸大学と東京芸術大学で学び、アニメ会社に就職。そこでいくつかの作品を制作した後に独立し、その後2016年頃に今の会社「UWAN Pictures」を立ち上げました。短編アニメが得意で、普段はCGを中心にアニメーションを制作しています。
――作品を教えてください。

最近の作品では、『花とアリス殺人事件』のCG監督を務めています。皆さんご存じの作品だと、『ねこねこ日本史』のオープニングやエンディングも担当しました。マニアックな作品としては『嫌パン』という作品で監督を務めています。
そのほか、2D、3Dを中心に、PVやミュージックビデオ、企業PRビデオなどを制作しています。小さい会社なので、撮影から声優さんのキャスティングまで幅広く手掛けています。
運営費は監督の自腹……?
――運営費は、基本的に深瀬監督が自腹で負担していると聞きました。その動機を。

複数の企業から協賛・協力をいただいていますが、確かにその通りです。やはり、函館は生まれ育った街なので、盛り上がってほしいです。かつて通っていた本屋さんがなくなっていくような変化を見ると、寂しくて自分が崩れていくような感覚があります。
だからこそ、少しでも函館の力になりたい。このイベントが、誰かの人生に希望をまくきっかけになればうれしいです。
あと、函館でイベントをやろうと動き始めたら周囲が盛り上がってしまい、ありがたいことに「ぜひ参加したい」「協力したい」という話が集まってきたので、もう止められないという面も(笑)。
――今後、イベントが継続して知名度が上がると、さらにいろんな立場の方や制作会社などが参加してくれる可能性がありますね。

今回は自治体や地元の大企業の後ろ盾がなく、あくまでも私が主体となって運営を進める中、多方面から協力の申し出をいただいており、函館のアニメイベントが秘めた可能性の大きさを改めて実感しています。
――期待が膨らみますね。お忙しい中、ありがとうございました。
深瀬監督の熱い思い、伝わりましたか?
私自身、このインタビューを通じて、深瀬監督の函館への愛とアニメ業界への情熱にグッときてしまいました。この記事を読んでちょっとでも興味を持っていただけたら、ぜひお友だちを誘って「おもちゃ函2025」に足を運んでみてください。
参加者が増えれば増えるほど、次回もさらに豪華なクリエイターや声優さんたちが函館にやって来てくれるはず!……もし来場者が少なかったら、次の開催が危ぶまれることに⁉
そんな未来を防ぐためにも、ぜひ熱気をリアルに味わいに行きましょう!
開催概要
イベント名称:おもちゃ函2025(おもちゃはこ2025)
会期:2025年7月12日(土)、13日(日)/特別授業:7月11日(金)
会場:五島軒本店ほか
主催・企画:深瀬沙哉(UWAN Pictures代表/アニメ監督)
参加費:基本無料(飲食や物販などは有料)※一部のプログラムは事前申込制(無料)
リンク
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