「海にこぎだすブランコ」──函館・船見公園で出会える、ちいさな空の旅

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函館の新名所、ご存じでしょうか。その名は「船見公園」。

名前を聞いてピンとくる方は少ないかもしれません。場所は、幸坂という急な坂をぐいっと上りきった左手。

ちょっと手前の右側には、今まさにホテルとして生まれ変わろうとしている旧ロシア領事館があり、その先、坂の突き当りは山上大神宮。坂本龍馬の親戚・澤辺琢磨がかつて宮司を務めていた由緒ある場所です。


▲「HOTEL 白林 HAKODATE」として生まれ変わる旧ロシア領事館

……と、ここまで聞くと「観光名所っぽい!」と思うかもしれませんが、実はこのあたり、長らくマイナーエリアでした。

というのも、坂がめちゃくちゃ急で、車でも登りにくく、駐車場もなくて。景色も良さそうなんだけどそこまで見晴らしが良くもないというか。

それでも実は、あの名作ドラマ『ランチの女王』の最終回に「函館再度公園」として登場したという輝かしい実績があります。……が、放送から時間も経っているし、聖地巡礼で来る人もあまりいなかった印象。穴場とも言われないくらいの穴場でした。

そんな船見公園が、突如として昨年から大きくリニューアルされまして。斜面の上に広がる形で敷地が拡張され、新しく階段が整備され、駐車場まで整備されました!

ちょっと長めの階段を、息を切らしながら登っていくと──視界がぱあっと開けて、目の前に赤いブランコが2基、風に揺れている。

このブランコ、ほんとうにすごい。

座ってこぐと、まるで海と空へ飛び込んでいくような感覚。足元の地面がふっと遠ざかって、風に乗って、函館の街がゆらりと揺れる。揺れるたびに景色が変わって、ちょっと怖いくらい。でも、そのスリルがたまらない。この感覚、正直クセになります。

函館山の山頂からのような「くびれ」が見える全景ではありませんが、そのぶん、港町ならではのスケールと雰囲気がダイレクトに伝わってきます。

ブランコに乗るなんて子ども以来って人も、これはぜひ体験してほしい。言葉じゃ伝わらないけど、「ここでしか味わえない景色と感覚」があります。

これはもう、函館の新しいアトラクションと言ってもいいんじゃないでしょうか。

ブランコの横には、地に足を着けて眺めをゆっくり堪能できるベンチも2つ。おやつを食べたり、ぼーっと海を眺めたり。家族でもカップルでも、おひとり様でも。ここに座っているだけで、なんだか旅の記憶に残るワンシーンになる気がします。

※ちなみに、2025年6月現在、公園の下の方(1階部分?)は芝生の養生中でほとんどの部分が立ち入り禁止となっていましたが、ブランコには問題なく来ることができます。

というわけで、船見公園の「天空のブランコ」、個人的にかなりおすすめです。函館のちょっと外れ、だけど心に残る場所。あなたも漕ぎ出してみませんか?

この記事を書いた人
佐々木康弘

ライター、時々カメラマン。物を書いたり写真を撮ったり、それらを編集したりすることを仕事にしています。編集企画室インサイド代表。

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