年末年始の函館で、観光に大きく影響する出来事が起きました。ニュースでご存じの通り、函館山ロープウェイが、給水施設の不具合によって運休する事態となったのです。
原因は、山頂付近にある市管理の受水槽に不具合が発生し、函館山ロープウェイ山頂施設で水が使えなくなったこと。
冬季は登山道(自動車道)が閉鎖されているため、山頂へ向かう交通手段は事実上ロープウェイのみという状況でもありました。
ここまでの経緯は、報道各社の取材によって明らかになっています。
ただ、気になったのは、関係者による情報の伝え方でした。
ロープウェイの立場と、市の役割の違い
函館山ロープウェイは12月31日、「函館山公園の設備に不具合が生じ、水の確保ができない状況となった為、誠に勝手ながら当面の間、営業を休止させていただきます」と発表(公式ページへ)。
さらに、「詳細な状況については把握しかねるため、函館市土木部公園河川管理課へ問い合わせてほしい」と案内されています。受水槽が市の管理である以上、この対応は理解できます。
一方、函館市土木部公園河川管理課は1月2日、「設備不具合により水の確保ができない状況となっております」と事実関係を公表。「原因の調査を行っている」「早期復旧に向けて取り組んでいる」としています(公式ページへ)。具体的なことは何ひとつ分かりませんが、現時点ではやむを得ない面があるように思われます。
問題は、ここから先でした。
情報が行き場を失ってしまう構造
こういう時に頼りになるはずの函館市公式観光情報サイト。1月1日から函館山ロープウェイが運休となっていることが記載されています(公式ページへ)。
そして、「運行再開の見通しなどの詳細は、函館山ロープウェイのホームページをご確認ください」と案内されています。
しかし、ロープウェイ側は「市に問い合わせてほしい」としており、市側は「調査中」としている。
結果として、情報が円を描くように行き来し、観光客の視点から見ると、どこを見れば判断材料が得られるのか分かりにくい状態になっています。
もちろん、情報の正確さという意味では、「自分の管轄ではないことはよそに確認してほしい」という整理は、行政として正しい面もあります。
ただし、それがそのまま観光情報として適切かどうかは、別の話ではないでしょうか。
観光客が本当に知りたかったこと
観光客が知りたいのは、責任の所在や管轄の切り分けではありません。
自分の旅が、どう変わるのかという点です。
今回、少なくとも明確に示されるべきだったのは、次の2点でした。
これらは単なる注意ではなく、観光の判断に欠かせない前提情報です。
どこが管理しているか以前に、「この街に来ると、何ができて、何ができないのか」を一文で示す必要がありました。

断片的な事実だけでは、観光情報にならない
行政や事業者の発信は、「事実は書いている」という形になりがちです。
しかし、観光情報として求められるのは、その先です。
その事実によって、
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体験できなくなるものは何か
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代替手段はあるのか
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安全面で注意すべき点は何か
こうした点をまとめて提示して初めて、観光客は判断ができます。
函館山の夜景は、函館観光の象徴的な存在です。だからこそ、その夜景が見られない状況では、情報を「正しく分担する」だけでなく、「一つに束ねて伝える」視点が求められるのではないでしょうか。

観光都市としての情報発信とは
今回の件で問われているのは、設備トラブルそのものではありません。
観光客の立場に立って、情報を再編集する役割を、誰が担うのかという点です。
「何が壊れたか」「何が止まっているのか」ではなく、「それによって、あなたの旅はどうなるのか」。
その問いに真正面から答えることが、観光都市としての情報発信ではないでしょうか。
函館は、夜景を大きな魅力としてきた街です。
だからこそ、その夜景が見られないときには、遠回しな案内ではなく、率直で分かりやすい説明が求められます。
今回の情報発信からは、その視点がやや見えにくかった。そこに、もったいなさを感じました。

